GEAR騎士凰牙
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GEAR戦士電童サイドストーリー 『C-DRiVE ラジオデビュー!!』

<三度、ある朝の風景>

 「行ってきまーす、母さん」
「車には気をつけるのよ、北斗」
喫茶店ポラール前の、毎朝の光景。
気分よく学校に向かう北斗の前に、人影が現れる。
「これはこれは、奇遇だねぇ。おはよう、草薙北斗クン」
極上の、しかし張り付いたような笑顔で、奇妙にあいさつをする銀河。
「ぎ、……銀河?」
こういうときは、なにかある。
本能的にそう察知した北斗、ちょっと引き気味に身構える。
「よ、今日もいい朝だな、な?」
「い、いったい、どうしたの。今朝はちょっとコワイよ……」
えへへ〜と笑って手もみしながら、のぞきこむように北斗を見て。
「いやさぁ、昨日のラジオ、録音してたりしないかなぁ……って」
「銀河……」
「え? もしかして、して……ない?」
北斗、心からあきれたようにジトーっとした視線のあと、ごそごそとカバンの中を探って。
1枚のディスクを取り出す。
「はい、これ」
「北斗ぉ…………」
涙を浮かべ、拝むような素振りでそれを受け取る銀河。
「カミサマホトケサマ北斗サマ、やっぱりお前、頼りになるぜっ!」
「あのね、銀河。そんなことがないように、そろそろ録音の仕方くらい覚えた方が……」
「ぃやっほぅ! 帰ったら、もう一回聞くぞー、ユキちゃぁ〜〜ん!」
一転、ご機嫌になって、周りのことなどまったく目にも耳にも入らない銀河を横目に。
深いため息をつくと、諦めたようにそのあとをついていく北斗であった。

<今日のOPは……>

夜もずいぶんふけた頃。
「ん〜〜〜っ! 疲れたぁ……」
エリス、ずいぶんと根を詰めたようで、ディスプレイから顔を上げ、大きく伸び。
「今日はこの辺にしておこうかなぁ……」
こんな時間まで作業していれば当たり前だが、さすがの天才少女も、疲労には勝てない様子である。
机に突っ伏して、なにげなくつけたラジオから、『HEART DRIVE』のイントロが。
『C−DRiVEの、ハートドライブラジオ!!』
『今日も30分間、私たち3人と楽しく過ごしちゃいましょう』
「あ……、これかぁ、銀河が騒いでるラジオって」
ぼぉ〜っとしながら、しばし聞き入るエリス。
『ところでさ、この番組が始まってから、なにか変わったことってない?』
『なにかあったっけなぁ……』『ん〜、私は。ちょっと、太っちゃったかな』
『あれ、ユキも?』
『サキちゃんも?』『ついつい、つまんじゃうもんねぇ……』
『そそ、食べちゃうんだよね』
『休憩中のお菓子は、魔物です☆』
『ダイエット中なのに、手が伸びちゃうんだよねぇ……』
「カロリー計算しっかりやってないのがいけないのよ……」
すっかり力の抜けた、ぐで〜っとした格好で。
なんとはなしに、ぼそりと突っ込むあたりが、けっこう几帳面なのかなんなのか。
『それから、コーヒー飲むと、なんだか仕事してるっって気にならない?』
『えー、私、コーヒーは苦いからキライ〜』
「コーヒー飲まなきゃ、眠くなっちゃうじゃない……」
すっかり眠そうな声で抗議する。
『苦いものが苦手とは、ユキはまだまだ、オコサマだねぇ』
『あの、ちょっと苦いところがいいのに。私は好きだよ?』
『ふふふ、私は知ってるのだよ、ミキィ』
『えぇ? な、ナニよぉ』
『この前、コーヒーに砂糖とミルクたっぷり入れてたよね、ふふふ』
『あー、ミキちゃんだって、オコサマじゃない〜』
『ちぇー、見られてたかぁ。あははは』
「ふ〜ん……。普通の女の子たち、なんだね……」
天才の悩みか、ため息をつきながら、ヒトコト。
『今日から「ガンバレ、君こそ電童パイロット!」のコーナーが始まります』
『電童のパイロットに関することから身近で起こった事件まで』
『みんなからの報告と一緒に、電童のあらゆる情報をお届けします』
『私たちと一緒に電童を応援しましょう!』
「そうねぇ、応援……って、えぇっ!?」
あやうくさら〜りと流しそうになるも、がばっと起き上がって。
「あのふたりー、知ってて黙ってたわねぇ……。明日、キッチリ言っておかなきゃ」
明日の朝は、ただで済みそうにないようです。

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story by Shin Wakutsu
※文章は当時のものです。

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