夜もずいぶんふけた頃。
「ん〜〜〜っ! 疲れたぁ……」
エリス、ずいぶんと根を詰めたようで、ディスプレイから顔を上げ、大きく伸び。
「今日はこの辺にしておこうかなぁ……」
こんな時間まで作業していれば当たり前だが、さすがの天才少女も、疲労には勝てない様子である。
机に突っ伏して、なにげなくつけたラジオから、『HEART DRIVE』のイントロが。
『C−DRiVEの、ハートドライブラジオ!!』
『今日も30分間、私たち3人と楽しく過ごしちゃいましょう』
「あ……、これかぁ、銀河が騒いでるラジオって」
ぼぉ〜っとしながら、しばし聞き入るエリス。
『ところでさ、この番組が始まってから、なにか変わったことってない?』
『なにかあったっけなぁ……』『ん〜、私は。ちょっと、太っちゃったかな』
『あれ、ユキも?』
『サキちゃんも?』『ついつい、つまんじゃうもんねぇ……』
『そそ、食べちゃうんだよね』
『休憩中のお菓子は、魔物です☆』
『ダイエット中なのに、手が伸びちゃうんだよねぇ……』
「カロリー計算しっかりやってないのがいけないのよ……」
すっかり力の抜けた、ぐで〜っとした格好で。
なんとはなしに、ぼそりと突っ込むあたりが、けっこう几帳面なのかなんなのか。
『それから、コーヒー飲むと、なんだか仕事してるっって気にならない?』
『えー、私、コーヒーは苦いからキライ〜』
「コーヒー飲まなきゃ、眠くなっちゃうじゃない……」
すっかり眠そうな声で抗議する。
『苦いものが苦手とは、ユキはまだまだ、オコサマだねぇ』
『あの、ちょっと苦いところがいいのに。私は好きだよ?』
『ふふふ、私は知ってるのだよ、ミキィ』
『えぇ? な、ナニよぉ』
『この前、コーヒーに砂糖とミルクたっぷり入れてたよね、ふふふ』
『あー、ミキちゃんだって、オコサマじゃない〜』
『ちぇー、見られてたかぁ。あははは』
「ふ〜ん……。普通の女の子たち、なんだね……」
天才の悩みか、ため息をつきながら、ヒトコト。
『今日から「ガンバレ、君こそ電童パイロット!」のコーナーが始まります』
『電童のパイロットに関することから身近で起こった事件まで』
『みんなからの報告と一緒に、電童のあらゆる情報をお届けします』
『私たちと一緒に電童を応援しましょう!』
「そうねぇ、応援……って、えぇっ!?」
あやうくさら〜りと流しそうになるも、がばっと起き上がって。
「あのふたりー、知ってて黙ってたわねぇ……。明日、キッチリ言っておかなきゃ」
明日の朝は、ただで済みそうにないようです。